言の葉枯れぬ杜

いろは巫女の祭事と呪物

言霊の神、言霊三神とは

祭壇に祀られる三体の神は女神である。
言辺姫命(ことのべのひめみこ)、言中姫命(ことのなかひめみこ)、言奥姫命(ことのおくひめみこ)のご三神はそれぞれ、言霊のもつ力を司る神々である。

言辺姫命
言葉にする前の言葉、すなわち形になる寸前の言葉を意味する。

言中姫命
言葉と言葉が響きあい、相乗効果によって導き出す言葉の力。
言奥姫命
放たれた言葉に含まれるもう一つの意味、言葉に含ませた想い。

この三女神をもって言霊三神という。

祭壇

いろは巫女の祭壇には言霊三神が祀られており、日々祈られる。

こと忌

夏越の日、夜明けより杜に紙垂による結界がつくられる。
結界に入る前に巫女は禊で身を清め、こと忌の祈り詞を唱え、前の夏越よりの悪しき言葉を封じたいろは餅を捧げる。
こと忌の祈りの後、いろは餅は雌雄合わさせて結界内の地中に埋められる。
その後、紙垂が取り外され、結界は解かれるが、石を埋めたところよりものの芽が出ないよう注意深く見、芽が出たら伸びる前に摘む。

 

言霊送りの夜

毎年八月十三日から十五日の間は霊送りの日である。
この三日間、日本の各地より弔われるの言葉が言霊の社に送られてくる。
いろは巫女はこの言葉を吊るし文に記していく。
十五日の夜に、吊るし文にあつめられた言葉を焚き上げ、霊送りの火によって彼岸へと送り出す。
この時あつめられる言葉とは、本来届くはずのところに届けられなかった言葉たちである。

霊送り